第3級アマチュア無線技士受験記録

2024年1月18日

(注:この文章は2001年、このサイトが別のURLで初めてオープンしたときに掲載したものです。その後、試験の内容が変わっていますので、これから受験なさる方はご注意下さい)

勉強に使ったモノたち

受験にあたり用意したモノたち

3級になるとテキスト(今回はCQ出版社の「第3級ハム~解説つき問題集(通称青ガエル本)」の他に大学ノート、そしてモールスのテープが加わります。テープ「CQモールスカセット~第3級国試編」はMDにコピーして使用した方が絶対便利!そして、それ以外にモールス練習ソフトCWTWも重要な武器になります。

主に勉強した期間: 2000年3月末~5月末 2ヶ月間

4級じゃ物足りない……

4級試験で肌で感じた「とにかく過去の問題を覚えろ」という教訓にすっかり味をしめた私は、4級合格直後、勢いにのってそのまま3級の試験を受けようと思い立ちます。

というのも3級になると、出せる電波の出力が短波帯では一気に5倍の50Wになります(HFの世界では、4級で許可される最大出力の10Wは通常の運用(特に7MHz帯)では全く役に立たないと言われています)。おまけに、問題の難易度もほとんど4級と変わりないとのこと。これはもう受けるしかない!ただし、1つ大きなハードルがあるのですが…、それは後ほど詳しく記します。

さて、即日受験できる制度のある4級と違い、こちらは事前に受験申請書を提出しておく必要があります(注:その後2003年より、4級と同じように当日受付&即日合否の試験が東京で行われるようになりました)。自分の勤務表とにらめっこし、試験日を勤務の休日にあたる5月30日に定め、3月には申請書を提出し準備開始。

工学と法規については、第4級試験と難易度がほとんど変わりないと言われていますので説明は省略します。ただし、法規には国際法規の出題が加わっていることと、工学では電鍵に関係した出題が加わっていることなどの違いがありますし、難易度こそ同じでも、4級では見かけない、異なる問題が出題されますから、やはり3級に準拠した問題集などに目を通しておく必要があります。

今回はY先生の著作ではなく、CQ出版社の本「第3級ハム~解説つき問題集」を使いました。このシリーズは通称「カエル本」として多くの受験生が使っているものです。「カエル」の由来はカバーの絵に蛙が登場することのようです。多くの受験生に利用されているのは、比較的大手の出版社の問題集であるため、一番購入しやすいというのが大きな理由でしょう。しかし、実際に使ってみると、Y先生の出している「これ一冊で必ず合格」シリーズの方がずっと使いやすいことを実感し、結局、後悔しました。その理由は、Y先生の本では最初に章ごとにきちんとポイントをまとめて「基礎学習」として解説し、その後に問題が出ているという形式なのに対して、このCQ出版社の本では、いきなり問題があり、その解説という形式になっていることがあげられます。問題をただやみくもに覚えるのが大切な試験とはいえども、やはり、少しは系統だって工学や法規の内容を理解をしたいもの。そういう欲求にはY先生の本の方がきちんと応えてくれます。

モールスが関門……

さて、いよいよ3級の受験勉強の本題……。

3級の受験で避けて通れない関門はモールス符号です。そう、あの、「トン・ツー」というモールスです。そうなんです。あの、プロの世界ではすでに使われなくなったというモールスです。これが試験にあるのです!!(注:2005年にこの聞き取り試験は廃止されました!)

さすがに、このモールスの存在が受験のハードルになっているのでしょう。実際に全国の受験者数でみても、1999年度の場合、4級は1万6千人以上に対し、3級は2千4百人余り。合格者に至っては、4級の1万人強に対して、3級は千百人程度と十分の一になってしまいます。

そして、モールスの勉強方法ですが……、1分間に25文字程度の聞き取りというのが試験で求められるレベルです。さっそくCQ出版社から出ているカセットテープを購入し、さらに、名ソフトとして名高いCWTWをダウンロードして準備しました。

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合調音法?それとも音感法?

まずはとにかく符号と文字を一致させなければなりません。覚え方は、一番てっとり早い、合調音法(資料集参照)をとりました。「・・-・」であれば「古道具(ふるどーぐ Furudogu)だからF」と覚える方法です。この方法の利点は、比較的無理なく覚えられる点。そしてデメリットとしては、速度が速くなるといちいち日本語の単語に変換するのでスピードについていけなくなるということが言われています。ただ、私の場合は「とりあえず3級が受かればいいや」という考え方だったので、文句無くこの方式を採用しました。あとで1級受験のときにわかりましたが、この合調音法、1級の「1分60文字」くらいの速度であれば、上記のデメリットはそれほど感じずにどうにか対応できました。というのは、合調音法であっても、何度も何度も練習しているうちに、音そのものも次第に覚えてくるためです。要は自分にあった方法で覚えていけばいいのではないかと思います。

ただし、もしも将来、CW運用をする可能性が少しでもあるのなら、合調音法よりは音感法と呼ばれる、音から即、文字をイメージする方法で覚えた方が絶対にいいでしょう……、というよりも、音感法で覚えるべきで、合調音法で覚えてはいけません。何せ現実のCW運用は1分間に100字以上のスピードでQSOするのが当然という世界です。このスピードでは合調音法での対応は絶対に不可能です。合調音法はあくまで試験対策と考えるべきでしょう。

とにかく、最初はCWTWで暗文(ランダムに文字が出てきます)を受信することと、通勤の電車の中で合調音法の語呂合わせを覚えることに努めます。「亜鈴、A」「棒タタキ、B」など繰り返し繰り返し電車の中でつぶやいて、周りの人たちの不審な目つきに気付き赤面したことも……。けれど、どうにか、そのおかげで、この記憶力の衰えた私でも、2、3週間でほぼ、語呂に関してはマスターすることができました。アルファベットは26文字です。和文の50音にくらべれば絶対楽だと思います。1級では昔は英文と和文の両方の試験があったとか・・・。本当に大変だったんですねぇ。やっぱり昔のOMさん達は偉大だ・・・・。

さて、問題は、実際に音を聞いて、それを文字にする作業です。こちらは、聞くだけでなくやはり実際に書き取ることが必要です。CWTWの乱数暗文モードで、紙に書き取る作業を続けます。最初はあたふたとなって、大丈夫かと心配しましたが、続けているうちに、どうやらスピードの方も確実に向上していきます。CWTWの速度を実際の試験よりもやや早めの30字位に設定して毎日10分程度練習しました。

ただ、試験直前まで暗文だけで練習しているとまずいということはよく言われますし、私も実感しました。というのも、試験では実際の英文(平文と呼びます)が出題されますが、英語の文章では、単語の切れ目が(1グループ5文字で必ず切れ目が来るという)暗文と違って様々ですし、あるいはよく出てくる文字など、クセがありますのでそうした事に慣れるのが肝心なのです。幸い、CWTWはテキストファイルの取り込みができますので、それで、事前に模擬試験問題を作成しておいたのが大いに役に立ちました。

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これはとても重要な心構え

試験を受けるときのポイントをY先生から聞きましたが、とにかくわからない文字はあきらめて(!)書かないことだそうです。というのも、一般的に言われるのは(採点基準を残念ながら総務省は公表していません(注:その後、2001年より公開されるようになりました。その内容はやはり、ここに記した通りでした)、脱字(記入しなかった文字)はマイナス1点で計算するものの、誤字(間違って書かれた文字)はマイナス3点と、減点が大きくなるためなのだそうです。採点は100点からの減点法で行うらしいのですが、3級の場合の合格ラインは90点と言われています。ですから、もしも誤字が4文字あれば88点となりアウト。その誤字を記入せずに脱字にしておけば、96点で合格になります。脱字だけなら、10文字脱字しても合格です。ですから自信のない文字は書かない!というのが鉄則というわけです。

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いよいよ試験

結局、1ヶ月ほどの準備でした。そして、5月30日、火曜日。この日、元々会社の勤務は休みになっていたので、何の気兼ねもなく、試験場に向かえます。やはり社会人となると、こうした趣味に関したイベントは遠慮がちになっちゃいますよね。

おなじみ、会場の江間忠ビル

会場は4級の時と同じ江間忠ビル。で、前回は実はカミサンがついてきてくれていたのですが、今回は平日なので、それはダメ。ただ、非常勤講師をしていたときの教え子(といっても無線の世界では大先輩ですが)の奥さんが同じ試験を受けるということで、その彼も来ることになっていて久しぶりの再会となります。

3階の会場でご夫妻に会い、しばらく話し込みます。奥様、相当勉強しているようです。しかもモールスの練習は2級を持つ旦那(というより彼は1陸技という最高峰のプロの資格を持っているのですが)が教えてくれたとのこと。これはツヨイ。うらやましいぃ……。

そして試験。工学、法規は緊張しなかったものの、電気通信術(モールスの試験をこう呼びます)はものすごい緊張でした。心臓がドキドキして、口から出てきそうとはまさにこのこと。体で全身の鼓動を感じたのは何年ぶりでしょうか?でも、CWTWでやや早い速度で練習した成果か、実際のスピードはゆっくりに感じることができました。

試験終了後、すぐに、ご夫妻と自己採点。 

例の「超暗記」のおかげで工学は14問中13問正解。法規も14問中13問の正解。70%の合格ラインはクリアできました。そして、問題の電気通信術(モールスのこと)は、どうも、落とした文字はなさそうで、安堵の溜息が出てきます。教え子の奥さんの方はパーフェクトだったようです。さぁすがぁ……。

いやぁ、それにしても電気通信術の試験、すごい緊張だったので、本当にこのまま自分は倒れてしまうのでは?と危惧したくらいです。3級程度でこうなのですから、上級試験を受ける場合はまず心臓を鍛えないといけないかなぁなどと思ったくらいでした。

 

会場の通路にはCWの体験コーナーも

6月某日

合格通知が届きました。4級でも後日送られてきましたが、同じ仕様で、合格の葉書の表にシールがはってあり、それをはがすと結果が出てくるというもの。なんとなく、小学生の頃、近所の駄菓子屋にあった、くじ引きを思い出しながら、シールをめくると、「合格」の文字が……。夜、メールを教え子に書きます。すぐに返事が来ました。彼の奥様も合格でした!

さ、これでホット一息つけた感じ。しかし……もうすでに、次の2級をねらおうという気持が実はこの時点で芽生えています。というのも、2級以上の上級ハムもどうやら「過去の問題を覚えりゃいいのよ」路線でいけそうとの情報をインターネットなどで目にしたからなのです。うーん、国家試験との闘い、当分続きそうです……。

こりゃ、もう「病膏肓に入る」かなぁ。

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Posted by JA1AIM