番外編:航空無線通信士受験記録

2024年1月18日

(注:この文章は2001年、このサイトが別のURLで初めてオープンしたときに掲載したものです。その後、試験の内容が変わっていますので、これから受験なさる方はご注意下さい)

勉強に用意したものは以下の通りです

1、電気通信振興会「無線従事者国家試験問題解答集~航空無線通信士」
2、電気通信振興会「学習参考書~航空無線通信士対象~電波法規」
3、電気通信振興会「学習参考書~航空無線通信士対象~無線工学」
4、電気通信振興会「無線電話練習用録音テープ 欧文」
5、大学ノート

主に勉強した期間2001年1月~2001年2月の2ヶ月間 

ついにプロの資格に挑戦!

実は10年以上も前、例のY先生のススメでこの試験を受けた事があるのです。このときは全くのお遊びで受験したため、無線電話の実技は受けず、筆記も法規と英語の科目合格に終わっていて、それっきりになってしまっていました。

2級も合格してすっかり調子づき、勢いづいていた私は、再度挑戦して、プロの資格を1つでも取っておこうと考えたのです。ちなみにプロの資格で、もっともペーパーが多いのはこの資格だそうです。同じ様な考えで受ける人がいかに多いかということでしょう……。

用意した参考書はいずれも電気通信振興会のもので上記の通り、航空無線通信士対象の「電波法規」「無線工学」「国家試験問題解答集」、そしてカセットテープです。

さて、勉強を本格的に始めたのは1月の中旬でした。計画をたてて、2月下旬の試験日までに、参考書のすべての章を2度ずつ読み、また問題集の過去問題も2度ずつやれるようにしておきます。ただ、この参考書をまず読むというのは、効率は悪かったかもしれません。結局、アマチュア無線と同じで本番の問題も大部分が過去の問題の繰り返しなのですから、まず過去の問題を解き、わからない部分を解説本で探すというのが正解だったでしょう。

法学に関しては、とにかく過去問題を解いていきました。当然のことながら航空特有の問題があり、これに関しては航空の「電波法規」解説本がかなり役に立ちました。というよりもやはりこれがないとお手上げの状態でした。10年以上前に受けたときはこうした参考書の存在も知らず、勉強しなかったのですから、無知というのは恐ろしいものです。(^_^;;)

工学は、問題によってはアマチュアの2級と同じものも出てきます。一部で言われているような4級程度では決してないと思います。それに加えてレーダーなどの航空特有の問題。やはり、解説本は必要です。それに加え、工学の問題の解法についてはは電気通信振興会の問題集には残念ながらのっていないので、アマチュアの2級受験の時に役に立った東京電機大学出版局の「これ1冊で必ず合格」シリーズの本も大いに役に立ちました。(ちなみに、過去問題集の問題は丹念にアマチュア無線の問題集を見てみると、数値まで一緒という問題が必ず探し出せました。ですから、アマチュアの試験を受けているとやはりこの試験も有利です。)

英語に関しては、ある程度の基礎力があれば、大丈夫なのでは?と思います。ただ、航空無線に関係した専門用語などは過去問からリストアップしておくと良いと思います。また、英会話の問題の形で実は法規と密接な関係のある問題もあります。英会話でよく出題されるのですが、遭難の時に発する信号を問う問題などは法規の知識がなければ解答できません。

実技(無線電話)。「ALFA, BRABO, CHARLIE…..」などというアレです。これはアマチュア無線で日頃使っていた関係で、特に勉強はしませんでした。ただし、問題の形式に慣れる意味で、カセットテープは聞きましたが。また、後述しますが、アマチュア無線で慣れている人は間違った言葉で通話表を覚えていないか注意する必要があります。間違って覚えているとそれを正しく矯正するのには結構時間がかかります。

結局受験日までのトータルの勉強時間、おそらく純粋に勘定すれば、30~40時間くらになるでしょう。

いつもと違う試験会場の雰囲気 

さて、迎えた2001年2月21日。 

おなじみ江間忠ビルの入り口

会場の江間忠ビルはもう毎度の受験でおなじみですが、今回は雰囲気が違います!なんと若い女性が受験者の1割近くいるようです。しかも華やかな雰囲気でこれは目立ちます。会話に耳を傾けてみると「私、なかなか羽田から異動にならなくてねぇ……」などの会話からは航空業界らしいということがわかります。カンパニー無線のオペレーター候補でしょうか?見ていると彼女たちにさっそくナンパしている輩もいます(オイオイ、試験は大丈夫?とお節介ながら声をかけたくなりますが……)。それから若い男性達にも、アマチュア無線の試験ではみかけないスポーツ刈りの青年達の存在が。自衛隊関係者?という感じもします。とにかくいままでには見なかった受験層が目立つのがこの試験。さすがプロの試験だと妙に納得してしまいます。

学科試験

さて、肝心の試験は、まず9:30より工学で、時間は90分。問題を見ると新問もありますが多くが過去問のようで安心します。いままでアマチュアの試験を色々受けた経験から見ると、4級から2級程度まで幅広く出されているような感想を持ちます。いくつかの問題で悔しいミスが出てしまいましたが、どうにか6割といわれる合格ラインには達したようです(アマチュア無線の試験では合格ラインは70%と言われていますが、プロの試験では60%と言われています)。

途中30分経った時点で退室ができます。結構みな退室していますが、かならず最後まで頑張る人がいるものです。その結果、意外な困った現象が起きます。実は江間忠ビルの会場は試験の部屋が3室あるのですが、今回の試験はすべて使用中。すると、早めに部屋を出た人々の行き場がなくなるのです。時間が経つにつれ、部屋の外の狭い廊下に終わった人たちがあふれはじめます。受験生はアマチュアの試験と違い、グループで来ている人たちが多く、皆おしゃべりしており、相当なにぎわいになります。

この通路に人があふれることになります。控え室が欲しい!

何度も、試験場から試験官が出てきて静かにするように訴えるのですが、あまり効果はないようです。今時の若者に静かにするように言っても無理だろうなぁ……。と思いながら江間忠ビルの構造にも時代遅れの無理を感じてしまいます。せめて控え室が欲しいところですねぇ。

11時10分より法規。これはほとんどアマチュアのときとあまり違和感なく終了しました。もちろん、航空独特の問題はありますが、基本は一緒。これも時間は90分です。

その後、昼食。弁当を食べながら、すでに頭の中は実技のことででいっぱい。目に付くアルファベットをすべて通話表の単語ににおきかえます。手元の英語の問題集の問題などは格好の材料。

まわりの声に耳を傾けてみますが、やはり業界の方が多いようで、「ウチの会社は外資系なんで、私みたいな営業畑の人間にもこの資格をとらせるんですよぉ」などという愚痴が聞こえてきます。営業マンに航空無線通信士の資格をとらせるとはいったいどんな会社なのか興味津々ですが……。

13時30分より英語。まず、英会話ということで、昼食時にセットされたテープレコーダーがから英語の設問を聞きその答えを選択肢から選ぶというもので、決して本来の英会話でなく、単なる聞き取り試験です。うーん、こんな試験だから、日本の管制官やパイロットの英語がうんぬんされるのだろうなぁ……。などとやや自嘲気味に思いますが、先日の日航機どうしのニアミスの事故でも、英語によるコミュニケーションの難しさが一部で問題視されただけに、気になるところです。

とにかく、この英会話問題が終了した時点で、そこから90分間、他の英語問題の開始となります。この日の場合、13:47分からその他の問題の開始となりました。従って、退室できるのも、それから30分後ということになります。筆者はたまたま英語を仕事で使っている関係で「ラッキー!」ですが、一般の日常生活で英語と縁のない方々には問題そのものはやさしくとも「心理的に」かなりのハードルではないかと思います。

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電気通信術

そして15:40より本日最後の試験、電気通信術です。さすがにこのころになると疲れが出てきます。アマチュアと違い、科目が多いせいで、やはり1日仕事!という実感があります。

最初に英語の試験を受けた同じ部屋で一斉にカセットから流れる暗文(5文字ずつを1グループにしたものがいつくも流れます)を書き取ります。これが受信試験。続いて送信試験は部屋を変えて、1部屋あたり3カ所で、試験官と1対1で向かい合い、与えられた暗文の用紙を読み上げます。前述しましたが、日頃、アマチュア無線をやっていれば、なんということはないのですが、注意する点が2つあります。

まず、アマチュアで使っている単語は本来の定められたものと違うものも多いのです。たとえば「j」をあらわすものは 「Juliet」 ですが、アマチュア無線ではなぜか、「Japan」を使う人が意外と多いものです。「d」をあらわす 「delta」 もなぜか 「Denmark」 と慣習的にする人が多いようです。この点、間違って覚えていれば、矯正するのに結構時間がかかります。アマチュアとはいえども、こうした事は日頃から正しいものを覚えるような態度でいる方が結果的にはハッピーということです。

もう一点、手紙に書式があるように、この送信試験にも、一定のきまりがあります。「始めます」「本文」と言ってから、本文を送信し、途中間違ったら「訂正」と言ってから、その間違った箇所の2、3字戻ってから言い直すことになっています。そして、最後に「終わり」ということになっています。これがあやふやだと思わず妙な失敗をして心理的に動揺する可能性があります。日頃練習する際に、こうした決まりの文句もセットで練習しておいたほうがいいでしょう。ちなみに筆者は「終わり」を「(以上、)終わります」といってしまうクセがあり、練習の時、言ってしまってから苦笑いがたびたびでした。ま、そう言っても大きな問題ではないと思いますが。

また、試験は、受験生と試験官の組み合わせが3組、同時に同じ部屋で行われるので、他の人の声が気になります。気にならないようにするには単純な方法ですが自分の声を張り上げるのが一番です。ところで筆者の試験の際、なんと途中で自分の読んでいる文字と数分違わぬ文字を隣で言っているのを聞き、びっくりしました。どうやら、2人とも偶然にもまったく同じ問題文だったようです。筆者以上に焦ったのは試験官。何度も何度も神経質そうに、そちらの方向に視線をやっていましたが、もはや手遅れ。こちらは、自分の送信がまるでエコーのように返ってくるのをむしろ心強く感じていましたが、もしも、返ってくる言葉が突然違ってきたらさぞや焦ったことでしょう……。もう少し試験官もそのあたりは神経質に問題文を選んでくれないと……。

というわけで無事、試験を終えたときには、もうすでに、4時半近くなろうとしており、太陽もかなり傾いていました。

結果発表……いやぁ、疲れたぁ!というのが実感……。 

さて、3月15日に合格通知が届きました。3月中旬に届くはずと試験場で言われていたのであまりにも律儀なこの日付にやや感動を覚えます。さて、これで、晴れてプロの無線資格が取れました。アマチュア無線で2級をとっていたので、受験勉強は比較的楽であり、また、あのときほどハラハラはしませんでしたが、受験当日を振り返っても、やはりプロの試験というのは、アマチュアと違い、ボリュームを感じ、かなり疲労しました。もしも、不合格で、もう一度受けなければならないという事態になっていれば、相当げんなりしていたことでしょう。

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Posted by JA1AIM