ホイップアンテナでこうも違う!?~HA-750BLからUHV-10に変えたら世界が違った話

2024年4月8日



こんな形状です

きっかっけ~電波があまりにも飛ばないという悩みから

我が家は集合住宅です。その環境でアマチュア無線をしようとすると、色々な制約が生まれます。

中でもアンテナはその代表格。八木やダイポールなど、大きな、目立つアンテナを立てることはできません。しかしU/VはともかくもHFに出たいとなると、様々な工夫でしのぐしかないんです。

以前、別の集合住宅に住んでいたときにはiCOM(アイコム)のATU(オートアンテナチューナー)「AH-4」と釣り竿を使って運用をしていました。良好なアースがエアコンの取り付け台のネジから取れていたことが幸いしました。

ところが、十数年前に引っ越してきた場所ではそのようなアースを取れる場所を発見できず。そこで購入したのはノンラジアルで、アースなしで大丈夫という触れ込みのCOMET製「HA-750BL」。

実際に運用してみると、確かに対応バンドでSWRはすべて良好に落ち、海外の局も良く聞こえてくるのですが、自分から電波を出すと、SSBでは国内ですらHFではなぜか取ってもらえず。

その後10年以上にわたってHF運用をあきらめていました。

ところがFT8であればもしかしたら……ということで、導入を決定。関連のソフトなどをインストールし、いよいよFT8デビューしてみると、見事、国内とのHFでの交信が出来るようになったんです。

そして、ある日、CQを出している海外の局に声をかけてみたら……。

まったく取ってもらえません。韓国、台湾、中国と、近場のはずなのですが……。

これはアンテナを変える必要が……、と思い始めます。

PSK Reporterで確認してみる

そこで、PSK Reporterというサイトで自分の電波の飛びを確認してみます。すると、やはり、前述の体感は正解だったことがわかります。

自分の電波、見事に国内にしか飛んでいません。それも北海道から九州北部まで。沖縄は厳しい。

こりゃだめだぞ。

ご存知の方も多いかもしれませんが、今使っているHA-750BL、ノンラジアルという点では便利ですし、それなりに受信は優秀ですが、「飛ばない」という評価がネットでも多く見られます。

でも、アースが取れない現状でどうするのか……。

こんな風にエレメントが9本!

カウンターポイズを試してみる

ある日、思い立ちます。

大勢のアパマンハム、今から15年前と違い、現在は5mくらいのリード線を数本、アンテナの元の部分にくっつけて広くベランダに広げることでカウンターポイズとして利用し、SWRを下げているということを何度も雑誌やネットの記事で読んでいました。

我が家でもそれを試す必要はあるよね……。

自分で作っても簡単なのですが、「CQオーム」さんで、そうしたカウンターポイズを製品化されているのを知っていました。ちょうどお店の通販で買い物をする必要があり、その際に一緒に注文してみたんです。

我が家で15年、野ざらしになっていたAH-4。試しにと、リグにつなぎ、ロングワイヤーを一時的に張ってみて、このカウンターポイズを使ってみたところ……。

なんとSWRがちゃんと下がるじゃないですか!

これは行ける!

UHV-10を知る

そんな中、たまたま読んだ「CQ ham radio」誌であるOMさんがコメットの「UHV-10」を利用していらっしゃるという記事を読みます。9つのバンドに出ることが出来るというホイップアンテナ。見た目がちょっと目立つのが気になりますが、それでも、軽量で、しかも、根本の部分で折り曲げられるとうことで、イザというときには、目立たなくしておくことが出来るのは現在のアンテナと一緒で便利です。

アンテナ、このまま釣り竿やロングワイヤーを実験して再開しても良いけど、せっかくだからこうした別のホイップに変えてみようかな……。

ちょうど、お小遣いで臨時収入があったばかり。

そこで、エイヤーと注文してしまいました。

いつも素早い「CQオーム」さん。翌日には到着。

さっそくベランダに設置です。

こんな風に事前に計算してみたのですが
机上の空論でした!
設置状況で長さ、大きく変わります

調整はそれなりに時間がかかる

このアンテナ、本体からそれぞれのバンドのエレメントが伸びているという構造。そのエレメントの長さを微調整することで、マッチングをとるというわけなんです。しかも、SWRが落ちる幅は非常にクリティカル。せっかくある周波数にあわせても、同じバンドの少し離れた周波数では再び調整が必要となります。そう考えると、使いにくそうですが、実は私の場合にはラッキーな状況が。そう、FT8です。

今後FT8での運用がメインになりそうなのですが、そちらは各バンドで周波数が決まっています。とりあえず、そちらに合わせれば良いというわけで、このアンテナのデメリットであるマッチングの取れる周波数幅が狭いというのはクリア!

そこでさっそくFT8の周波数ですべてのバンドの調整を試みます。

やってみると、確かに時間のかかる作業となります。

全部で9本あるエレメント、一つ一つ、リグでSWRを確かめながら長さの調整をしていくのですから。ただ、助かるのは、ベランダ設置なので、リグとの往復作業はさほど大変でないこと。何十往復かしましたが、半日作業でほぼ、調整を終えました。

5本のカウンターポイズ、効果をしっかりと出してくれています。

でも、3.5MHzだけはどうしてもマッチングが取れません。これは後日への課題としましょう。

アンテナアナライザーがあれば、もっと時間短縮できるでしょうね。高額なので、当局には買えないのですが。最近話題のNano VNAを使うというのは「手」かもしれません。

PSK Reporterで再び確認してみると劇的な改善が!!

さぁ、それでは結果を見てみましょう。

IC-705、10WでFT8を運用してみます。

その結果はこの通り!

なんと世界各地で、アフリカも南極も含めて、しっかりと自分の電波が受信出来ています。

これは感動です!!

素晴らしい!

もちろん、この日の夜は祝杯をあげました!

ステルス的な使い方もできる!

ただ、このアンテナ、モービルホイップとはいえ、その形状ゆえに目立ちます。

集合住宅ではいかに目立たないようにするかが大切。このアンテナには折り曲げ機能がありますから、普段は折り曲げておいて、必要な時だけ立てるという使い方もできます。一戸建てで屋根の上などに立てる等という場合は無理ですが、集合住宅のベランダであれば、それは可能。

アパマンハムにとって、そんなところも大きなメリットになるアンテナです。

悩みは雨!ある程度の雨になるとSWRが悪化

このアンテナの威力にしばし脱帽をしたのですが、残念なこともあります。

それは、小さなアンテナで頑張って各バンドのマッチングを取ってくれているがゆえに、ちょっとしたことでマッチングがずれてしまうということです。たとえば、カウンターポイズの位置を変えるということもそうですが、一番やっかいなのは雨です。

雨が降り始めると、とたんにSWRが大幅に悪化してしまうのです。

こればかりは仕方ないですよね。

というわけで雨降りの日には無線はお休み……、という、まるで農耕作業か建築作業的なモードとなっています。これ、解決方法はなにかないかと模索中です。場合によってはチューナーの利用を考えるというのも選択肢としてありかもしれません。

もう一つ残念な事……、中波放送の遠距離受信をあきらめる

当然といえば当然なのですが、中波放送の受信は対象外です。

今まで使っていたHA-750BLは中波帯の受信が非常に優秀。無線で使わない時も、AMラジオ放送などを聞くために重宝しました。特に遠距離のAMがとても良好に受信できるため、夜間にラジオ関西やABCラジオなど、関西の放送や九州の放送を楽しんでいたのですが、このUHV-10では残念ながら受信できません(地元中波放送も結構厳しい!)。そのことだけは残念でした!逆に言えば、HA-750BL、ラジオ受信に関しては本当に素晴らしいアンテナだということができるのではないかと思います。

トータルでは大満足の結果に

以上、長々と書いてきましたが、導入して1ヶ月。結果として大正解だったと思います。

何せ、このアンテナを立てるまで、HFでは海外とのFT8での交信は不可能でした。

ところが、このアンテナを立てたその日から海外とFT8でつながり、なんと3週間経った時点での初エンティティは50を越えました。

もしかしたらDXCCも将来狙えるかも……、と思うほどの環境の変わりようにビックリしています(ここから先が大変なのでしょうが)。

調整だけは少々時間がかかりますが、もともと電波好きの人間であれば、それも楽しみに変わるはず!(^^)

同じような環境にいらっしゃる方にはぜひオススメしたいと感じるアンテナです。

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