第2級アマチュア無線技士受験記録

2024年1月18日

(注:この文章は2001年、このサイトが別のURLで初めてオープンしたときに掲載したものです。その後、試験の内容が変わっていますので、これから受験なさる方はご注意下さい)

受験勉強に用意したのは、

1、東京電機大学出版局の「これ一冊で必ず合格~第2級ハム講座」
2、CQ出版社「1・2級ハム国試問題集~平成9年度・10年度実施分収録」
3、大学ノート
4、「CQモールスカセット第2級国試編」のMDにコピーした物
  (ちゃんと商品を購入しコピーしていますから念のため。MDにコピーした方が頭出しに便利!)
5、CWTW(パソコン用モールス練習ソフト)

主に勉強した期間: 2000年9月~2000年12月上旬 3ヶ月ちょっと

上級ハム、2級を目指そう!

2級!まだHF(短波による運用)を始めてもいないのに、いつかは10MHz帯や14MHz帯の周波数にも出たい!と言う気持ちがありました。これらのバンドは2級以上でなければ出ることの出来ないバンドです。また、例のY先生もしきりと10MHzでのCW(モールスによる運用)を私に勧めているのですが、そのたびに「あ、そうか、君はまだ3級だったね。10MHzは3級じゃ、出れないのね……」などとからかってくれています。

そこで意を決して、2000年12月の試験を目指し、夏の3級受験後、準備を始めました。とはいえ、問題集を買ってみたものの、法規は読み進めても、工学がホネ。3級とのレベルのあまりにも大きな差にただただ溜息がでるばかりでした。

結局、法規のほうは、徐々に10月くらいまでにどうにか、一通り目を通しましたが、工学が大変。とりあえず、とっつきやすい、つまり計算問題の少ない部分、「電波伝搬」とか、「送信機」とかを10月になってやっとスタートさせました。

覚え方色々

ちょっと気が楽になったのは、CQ出版から出ている「楽しく覚える1アマ攻略」と題された本を秋葉原の「ロケット・アマチュア無線本館」で立ち読みしたことと、インターネットでの上級ハムを受験した局長さんの個人のホームページのいくつかを見たこと。どうやら徹底した暗記をすればある程度の点数は上級ハムの試験でも取れるということが実際にわかり、ほっとします。公式も語呂合わせ。Y先生が教えてくれたのですが、「Q=CV」なんて公式も「Qちゃんシブイ!」。対数も log 2 などは「二人でミカンを(30)一つ(1)」、つまり、0.301 と覚えると言う具合。ただ、こうした語呂はそれぞれ個々人で覚えやすいものがあるはずです。自分で編み出すのが一番良いようです。自分でも傑作だと思った自作の語呂合わせは真理表の覚え方。1と0をそれぞれモールスにみたてて覚えると、NOT が(1100なので--・・となり)「Z」、AND が 「V」、NAND は「OE」 OR が「J」、そして NOR が「B」。これを覚えるのに、「全部(Z)吐いた(Vomit)、オエーッ(OE)、ジョ*(J)・ボ***(B)」という具合。最後のジョ……というのは知り合いの名前です。本名を出すとまずいので伏せ字にしてますが……(苦笑)。彼が酒に酔って吐いている姿を想像して解答します……。

とりあえずは科目合格を目指す?いやいや……。

そうは言っても、結局、遅々として進まぬ勉強の結果このままでは間に合わないと思い、とりあえず、的を科目合格にしぼることになりました。つまりモールスだけでも合格しようと決意します。2級と1級の試験ではモールスに受かると、それから3年間、筆記が不合格でも、次に受けるときにこのモールスだけは免除されるのです。逆に筆記試験が大丈夫でもモールスがダメであればそうした科目免除はありません。そこで、11月下旬に2日ほど休日がとれた(なんと珍しい!)のをいいことに勉強に専念。ところが、あにはからんや、これが意外なことに、モールスだけでなく、筆記の科目にも効果ありました。というのも恥ずかしい話なのですが、私のように集中力のない人間にとって、モールスの練習なんて、何時間もかけるなんてのは不可能です。集中して練習できるのはせいぜい1回に10分程度のもの。いきおい、時間が余り、「何をしよう?ん?筆記の勉強すればいいじゃん!」となったわけです。おかげで、法規、工学ともにやっと一通り、目を通すことができました。そこで、問題集もいよいよ2巡目に入ります。

ところが、意外なところに落とし穴が。ふと気付くと、この問題集、出版が1994年。6年前です。ということはそれ以来、18回、試験があり、そのたびに新問題が出ているはず。ありゃ、これだけじゃまずい!と遅まきながら気づき、あわてて試験の4日前にCQ出版社から出ている新問題集「1・2級ハム国試問題集~平成9年度・10年度実施分収録」を購入し、目を通すことになりました。思った通り、相当数の新問題が出ています。こちらも試験日までに片づけていくことにします。

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ところでモールスの勉強は?

今度は2級。さすがに25字から比べ、1分間に45字はメチャクチャ速く感じます。紅葉の頃になり、ひたすらCWTWで練習を続けます。(追記:その後、アメリカのアマチュア無線連盟、ARRLのサイト内で毎週様々なスピードでのCW練習用音声とテキストがアップロードされていることを知りました。おまけに過去の豊富なアーカイブもあります。こちらも大変便利なサイトです。CWTWで練習したあと、こちらでテストというのもいいと思います。http://www.arrl.org/w1aw/morse.html)

試験の10日ほど前からは、毎日、朝と夜に10分だけ練習。それでも、毎日劇的に取れるようになることがわかります。最初は夢に思えた1分45字でしたが、毎日練習すれば確実に向上するものだと実感しました。

実際、トータル、105文字の暗文(1分50字)のセッションで、11月中はなんとか70文字とれる程度だったものが、12月1、2日には80字程度、3、4日には90字程度に飛躍的に伸びています。つまり、こうした「技術的」なものというのは、時間をかければ、間違いなく成果が上がるということです。でも、その時間が……というのが社会人の悩みですよねぇ……。

ただ、誤字が最大の問題でした。最初のうちはGとDでとまどいました。これは、「ごうじょうだ」と覚えたものが、「どうどうと」という音に似ているなぁ……などと、ある時にふと思ったのが運の尽きで、それ以来なぜか、G(--・)の音を聞くと「どうどうと」という言葉がまず頭をよぎるようになってしまったのです。合調音法の難しさはこんなところにあります。また、最初の頃と違い、スピードが早くなってくると、H(・・・・)とS(・・・)の勘違いも多くなりました。これは他の方々もよく指摘されることです。

今回も3級のときと同じで、CWTWでは実際の試験のスピードよりもやや早めの文字数を設定しておき、気分が楽になりました。ちなみに私の場合は1分間に50字の設定にしておきました。

また、モーティベーションを高める意味で、モールスの歴史などが記されたCQ出版社の「モールス通信 通信の原点=CW その魅力/運用法/歴史」などの本も読み、モールスそのものにも興味を持つように努めました。この本は網羅的にモールス通信の様々な話題を扱っており、大変おもしろい本です。モールスをなさる方はぜひ読まれるといいと思います。

今回もCQ出版社のカセットテープを購入しましたが、こちらは直前までとっておいて、試験日前の模擬試験のように利用しようと考えました。また、3級のときと同じく、テープの形ではなくMDに一度コピーして使用しました。というのも、そのほうが、問題ごとにトラックを区切ることにより、頭出しが容易になり、使いやすくなるからです。

また、これも3級受験記で書きましたが、暗文練習だけでは絶対にだめです。英文の平文(通常の文章のことをこう呼びます)の場合、暗分とは違うクセがかなりあります。名探偵ホームズの「踊る人形」などを読んだ方ならおわかりでしょうが、英語で一番多く出てくる文字は e です。しかし、暗文ではそうそう出てこなくて、平文を始めるとこの文字の多さに焦ることになります。というのは e は他の文字と比べ時間的に圧倒的に短いので(短点1つだけ「・」)、書取りを素早く行わなければなりません。これが、スピードが早くなると一番大変だということはおわかりいただけるでしょう。一方で、th とくると次はたいてい e とか、o, i といった文字ですので、想像がつきやすく、こうした点は実際に平文を受信していけば、次第にテクニックとして身に付き、受験に有利になります。

緊張の試験当日

このころはバスが唯一の交通機関
現在は地下鉄「大江戸線」もあります

さて、12月10日、日曜日。試験会場は今までと同じく、晴海の江間忠ビル。地下鉄で銀座まで行き、そこからバスに乗ろうとしましたが、なかなか来ません。休日ダイヤはバスの本数が少ないことをうっかりして失念していました。もう時計は9時。9時15分までの入室に間に合うか、ヒヤヒヤします。やっぱり時間には余裕をもたせたいものです。特にバスを使う場合は・・・・。なんて思っているうちに無事にバスが到着し、どうにかぎりぎりに会場に到着しました。(余談ですが、この路線のバスは新宿から晴海まで1時間以上かけて結ぶ、珍しい長距離路線です。4級受験のときには始発の新宿から利用し、「はるばる!」といった感じで晴海に来たものでした。しかし地下鉄大江戸線の開通を機に、このバスもは四谷からに距離が短縮されるとのこと。本日が乗りおさめになるわけです。試験を目前にやや感慨ムードになっていました。)

試験会場は2部屋を使用しています。受験者はおよそ150人前後のようです。

問題集に目を通す間もなく、すぐに試験の説明になります。会場を見渡すと、3級受験の時とは違い、年齢層が相当高くなっています。ほとんどが40~60歳代。それに混じって20歳代がちらほらというところでしょうか。

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工学

これが勝負!と思っていましたが、意外と健闘しました。計算問題が少なかったことが幸いしたようです。ただし、ループアンテナに関する出題があり、計算式は示してあったものの、小学生以来すっかり忘れていた円の面積の出し方で超文系人間は一瞬戸惑いましたが。(^_^;)

30分ほどで退室できますが、ほとんどの人が10時半ころ、つまり1時間ほどまでがんばり、その後次々に立ち上がり退室します。

部屋の外に出てみて自己採点してみると110点をマーク!余裕で合格ラインです。4級の時以来の座右の銘、「過去の問題をひたすら覚える!」という、いわば正攻法でない方法でもどうにか大丈夫なことをここでもどうやら証明したようです。とはいえ、思わぬ問題もありました。フィルターの回路図などは2級では今まで出ていない新問題です。その後1級の問題集を見るとちゃんとこちらにでていました。そういうこともあるのですね。

問題の通信術

試験会場も分煙化(といってももちろん
試験中に煙草が吸えるわけではありません)
通路の一部が喫煙室になっています(2002年撮影)

さて、通信術を前に、新宿駅で朝買ってきた弁当を広げますがその味にちょいと驚き。冷え切った「チキンライス弁当」というのは独特の味わいですねぇ…。うーん、お好きな方もいらっしゃるでしょうが……。やっぱりチキンライスは暖かい方がいいなぁ……。これだけ時間があるのですから、近く、大江戸線が開通したら昼ご飯は六本木なり新宿なり好きなところでもっと暖かいものを食べて余裕で戻ってこれるようになるなぁなどと考えつつ、まだ早いと思いながらも11時半の本来の工学終了の時に部屋に戻ってみます。なんと部屋の前は大混雑。みんな次の通信術のためにいい場所を確保しようと、扉が開くのを待っていたようです。扉が開くと同時にみな、部屋に殺到。スピーカーに近いところはすぐに埋まっていきました。

ところで、通信術では終了後数秒間答案をチェックできます。実はこの瞬間が意外と大切だと私は思っています。列の前や後ろに座っていれば、試験後、間髪を置かず答案を回収される恐れがありますが、そうでなければ、若干の時間があるはず。そこで、私は真ん中ほどに陣取ることにしました。試験後、数秒間で修正すべき所を修正しようと考えていたからです。もちろん、消しゴムで消したりするのは時間的に難しいですし、修正すると点数上、マイナスになってしまいますが、脱字で残したところを前後の文脈から判断して文字を埋めていくことぐらいはできると思ったからです。一応、本業は英語を使う仕事なので、こんな時にややメリットがあるわけです。もちろん、判断を誤ると、逆に、それで一気に誤字だらけとなり、不合格になってしまいますが・・・。

いよいよアルファベットが流れ、その後試験問題がスピーカーから流れ始めます。皆が一斉に鉛筆を走らせている音がまるで大きな波の音のように聞こえてきます……。この異様な光景に一瞬、圧倒されてしまいます……。

通信術の科目合格だけでも果たそうと決意していたのですが……。試験直前の練習ではパーフェクトにとれたこともあったのですが……。本番では、頭が白くなること3回。取りこぼしが結構あります。それにあとで見直しのときに前後の文脈から判断して2字ほど挿入しましたが、違っているかもしれません。どうやら頭が白くなるたびに、取れなかった文字が3、4文字あったようで、そうすると100点からの減点法で85点前後。まさにボーダーラインです。悪くするとこの通信術で不合格になるかも!と思い、落ち込みました。せっかく心配していた工学が大丈夫だったのに……。

あとで3級受験の時に会った教師時代の教え子(彼の奥様が受験だったのです。彼は無線の世界では大先輩です)に聞いたのですが、彼はやはり座席はできるだけスピーカーに近い方がいいといいます。他人の鉛筆を走らせる音が、ざわめきになって聞こえるので、多分に気が散る可能性があり、それを打ち消す意味でも前に陣取るべきとのことでした。実際に試験を受けて、確かにそれはあるなと感じました。上にも記した通り、鉛筆を一斉に100人以上が動かし始めると相当なノイズになるものです。もちろん、本来の試験の符号は聞こえなくなることはありませんが、私のような小心者は心理的にかなり動揺します。

いずれにしても、不満足な出来となりました。

法規

さて、次は法規。

自信のあった法規ですが、ふたを開けてみれば、意外とうっかりミスがあり、結果は自己採点で98点。結構厳しいものです。工学にかかりきりだったからなぁ……と心の中で言い訳をします。合格ラインには達していますが、悔しいものです。こちらは30分ほどでできて、部屋を出ました。つまり、午後2時にはすべての試験が終了ということになり、予定外に時間が浮き、晴れあがった空のもと、隅田川の川面を眺めながら帰途につきました。

ところで、上記で文句を言っていた食事に関しては、今はとても恵まれています。トリトンスクエア(写真上)が試験会場のすぐそばにできましたが、この中に、飲食店がたくさんあります。たとえば、ALICE CAFE (写真下)はフードコート方式で、和洋中、何でも安価にそろいます!

結果通知の日

そして、運命の12月28日、木曜日になります。

この頃、インターネットの「無線従事者資格の館」にある掲示板を連日チェックしていました。この掲示板は受験の前後になると一気に活性化し、受験者の報告が届きます。ですから、ここに2級合否関連のメッセージが出れば、もうこちらにも葉書が届くのがすぐだとわかるからです。そして今日、ある受験者の「2級合格」のメッセージが掲載されているのを発見し、すぐに、郵便箱を見に行くと……、無線協会からの葉書が届いています!その場で、ゆっくりとシールをめくります。心臓の鼓動を聞きながら……。「合格」の2文字が……。やったぁ!!と心の中で叫びます。久々に心からの歓喜の声を上げてしまいます。結構、時間かけて勉強したのがようやく報われたという気持ち。先ほどまでの不安もきれいに消えて、気分もハイに。いつのまにか心の中で「今度の4月は1級受験を目指そう」と誓っている自分に気付きます。ホント、物好きな人間ですねぇ……。

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Posted by JA1AIM