第1級アマチュア無線技士受験記録

2024年1月18日

(注:この文章は2001年、このサイトが別のURLで初めてオープンしたときに掲載したものです。その後、試験の内容が変わっていますので、これから受験なさる方はご注意下さい)

1級受験の勉強に用意したもの

用意したものは
さすがに多くなります……

 1、東京電機大学出版局「これ一冊で必ず合格~第1級ハム講座」
 2、CQ出版社「楽しくおぼえる1アマ攻略」
 3、電気通信振興会「第1級アマチュア無線技士用モールステープ」
 4、「CQモールスカセット第1級国試編」のMDにコピーした物
   (3、4ともにちゃんと商品を購入しコピーしていますから念のため。MDにした方が頭出しに便利!)
 5、CWTW(パソコン用モールス練習ソフト)
 6、CQ出版社「上級ハムになる本」
 7、CQ出版社「1・2級ハム国試問題集~平成9年度・10年度実施分収録」
 8、上級アマチュア無線講座(インターネットでダウンロード)
 9、英単語カード(公式の暗記に使いました)
10、大学ノート
 

主に勉強した期間: 2000年12月末~2001年4月上旬 3ヶ月ちょっと

さぁ、いよいよ最上級ハム、1級を目指そう!

1年前にはまさか自分が受けるとも思っていなかった1アマ。でも、どうやら「過去の問題丸暗記!」でいけそうだと思ったからには後にはひけません。いよいよこのアマチュア無線最高峰の資格にチャレンジ。2001年4月8日の試験日に向けて、前年の12月くらいより、別項にも書いた航空無線通信士の試験をはさみながら、受験勉強をしました。日記から、そのままお届けしましょう。

試験4ヶ月前(2000年12月某日)~準備開始!

とりあえず、最初に用意したのは、4級からずっとお世話になっている(1回だけ浮気しました!すみませーん!!)シリーズ、東京電機大学出版局の「これ一冊で必ず合格」の1アマ編。なにせ、日頃から尊敬する本の筆者の印税収入を増やしてあげなければ!と買ったのだから、Y先生、1級とったら、おごってくださいよ!!

そして、一時受験界の話題を独占したCQ出版社の「楽しくおぼえる1アマ攻略」。群馬のガールスカウトの女の子たちが、「問題と答えをまるごと覚える」という禁じ手に出て見事合格したそのテクニックを本にした物。

モールスについては、2級までと同じく、パソコンソフトCWTWを利用。それと、直前に模擬試験として利用しようと購入し、MDにコピーしておいた(以前にも書いたけれど、こうすると問題の頭出しが楽)CQ出版社のモールスカセット(追記:2級の項目にも書きましたが、その後、アメリカのアマチュア無線連盟、ARRLのサイト内で毎週様々なスピードでのCW練習用音声とテキストがアップロードされていることを知りました。おまけに過去の豊富なアーカイブもあります。こちらも大変便利なサイトです。CWTWで練習したあと、こちらでテストというのもいいと思います。http://www.arrl.org/w1aw/morse.html)。

当初は以上の準備で、いざ、受験勉強に突入!

さて、1級のモールスは1分60字。3級から2級の速さを聞いたときには相当な衝撃を受けたものだが、意外なことに、今回はそれは感じられない。2級の45文字と比較して、それほど大きなギャップは感じないのだ。ただ、やや早くなったということは、その分、文字数も多くなるし、さらに聞き取りの時間も3分と長くなっている。集中力をどう守るかの闘いになるのだろう。

ところで、練習の速度を速くすればするほど効果があるのだろうか?試しに、訓練のため、90文字でしばらく練習した。やっと暗文の文字がある程度とれるようになり、その後、60文字にスピードを落とすと、意外な事が。なんと、ぜんぜん取れないのだ!耳で聞いた感覚が全く別の文字のように聞こえてしまう。「速度を上げて練習=効果が上がる」というものではないことを思い知る。どうもそれぞれのスピードで、コードの認識の仕方が違うらしい。ということで、訓練としては、70文字くらいが適当のようだ。あまり早くしてもまずいという訳。ただ、実際にCW運用をしようとすると、最低でも80文字は取れないとお話にならないだろうし……。うーん、試験まではあくまで試験のためと60字で割り切り、合格したら、もっと速い速度の練習をして、いつの日か、CWにデビューしよう……。(後日談:この点は、個人差があるようで、スピードを速くしてとれれば、遅いスピードも全く問題なく、むしろ、その方が取りやすいという方もいらっしゃるようです。私の場合はダメでしたが。)

試験3ヶ月前(2001年1月某日)~モールスの平文に戸惑い

12月末に1日10分程度のモールスの練習を始めたが1月中旬には、暗文だけに関していえばほぼ合格ラインに達した模様。その分、筆記に集中できるからいいか。(と思ったのが大間違い!暗文と実際の平文、違うという認識は過去の試験から持ってはいたが、1分60字のスピードになると、相当な違いである。暗文がとれても、平文はまったく歯がたたず。あとで気づき唖然とすることになるのだが、この時点では、まだそれに気付いていない!)

ただ、2月に航空無線通信士の受験を控えて、その勉強をしていると、プロとアマの違いが出てきてとまどう事がある。呼び出しの反復に関する間隔の時間が違っていたり、暗語の禁止がプロではなされていないなど、細かいところで意外な違いがある。そのあたりを混同しないように気をつけなければ。

試験2ヶ月前(2001年年2月某日)~工学に唖然

問題は工学。2月中旬に航空にかかりっきりで、ふと、1級の問題集を見て唖然。これは大変。あと1ヶ月半で間に合うのだろうかとかなり焦る。

試験にいよいよカウントダウン!(2001年3月某日)

2月21日に航空無線通信士の試験が終了。さあて、あと、1ヶ月半で工学が間に合うだろうか????などと思っていたら突然のインフルエンザで勉強が中断。おまけに4月からの新勤務表が内示されて、それによると受験日の4月8日が勤務に!ピーーーンチ!!

航空無線通信士の試験会場もあの江間忠ビルでした。

試験1ヶ月と4日前(2001年3月4日 日曜日)~やはり工学が…

妻の協力には感謝。4級受験いらい、不平も漏らさずに休日を受験勉強に費やすのにほったらかしておいてくれる。感謝感謝。実は秋風が吹いているだけだったりして?

さて、法規の方はあっさりと一通りさらえ、問題集も2巡目に入る。こちらは、2級を受験していたのと航空級の受験のダブルで、相当楽になっている。重なる問題も多い。よく、ちまた言われる「2級を受けようと思うな。はじめから1級を受けた方が得だ」というのも、法規に関しては全くその通りだろう。1級と2級の差はほとんど感じない。

ただ、工学が……。やはり圧倒的に計算問題が多くなり、それも、解法を見てもまったくついていけないものが多い。群馬ガールスカウトの攻略本ではないが、「激むずー」なのだ。これは彼女らの方法を見習ってひたすら暗記につとめるしかないだろう。

また、工学の実際の進め方については、以下の通り、最初に自分にとってとっつきやすい後半の分野から入った。まず、東京電機大学本を使い、「送信機」、「受信機」、「電源」と比較的簡単に来たが、「アンテナと給電線」が公式が多く難渋。一方「電波の伝搬」は容易。問題集の構成されている順番(自分のような理系音痴には最難関である電気物理や電気回路から通常始まる)にやる必要はまったくない。当たり前と言えば当たり前だが、意外とこういうところで、あきらめてしまうこともあるのではないだろうか?

でも、やはり2級とは違い、計算問題が多い。公式の暗記が大変。問題を見てすぐに公式が出てくるようにするには、やはり学生がよく使う英単語カードで覚えるしかないか?

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試験29日前(2001年3月10日 土曜日)~平文対策

CQ出版社から出ているカセットを聞く。1分間60文字ということだが、妙なことに、問題によってスピードが速くなったり遅くなったりする。速くなると、とたんにめまいを覚える。1分60文字?ホントに??この早さはCWTWで練習のためにわざと早めに設定している70文字そのものなのだ。そりゃ、こっちの早さの方が本番の試験に近いに違いないと思い、急遽、CWTWの設定を1分80文字に切り替える。おまけに1問試しにやって見ると……30文字以上も取りこぼしがあり、不合格レベル!いままで暗文だけでやっていたのが間違いのもとかもしれない。暗文と平文は実際に書き取ってみると、相当感じが異なる。とにかく書取るのが間に合わず、すぐに音を追っていけなくなるのだ。これはホントにえらいこっちゃ!!インターネットで英語のサイト(CNNとかBBCのニュースのサイトが便利)から、テキストファイルをダウンロードして、CWTW用の例文を大量に作成し、練習を続ける。

試験26日前(2001年3月13日 火曜日)~工学を理解しよう!

 やはり、暗記能力も低下しているので、すべてを丸暗記といいうわけにもいかない。年だからなぁ……。というわけで素直に自らの堕落を反省し、「上級ハムになる本」を買ってくる。やはり、説明が納得いけてわかりやすいねぇ。そうそう、ふと思いだし、以前,インターネットのHPでダウンロードしてそのままになっていた「上級アマチュア無線講座」を見てみると……、あ、これも結構わかりやすい!本を買うまでもなかったかもしれない。

「送信機」から始め「測定」まで来て、やっと、先に片づけようと思った後半ができた。これから、今まで避けていた工学の前半。でも意外と2級をくぐりぬけてきたせいか、最初の「電気物理」はそれほど、大きな問題なく、2日ほどでクリア。今日から、「電気回路」に入る。多くの人が「難問!」と言っているキルヒホッフの法則にいよいよご対面!となるはず。

CWは、もう、なるようにしかならないと開き直る。ひたすら1日10分を2回(暗文+平文)という練習を続けていこう。

試験21日前(2001年3月18日 日曜日)~素敵なサイト

ここ数日、「電気回路」でつまづいてしまう。インピーダンス、アドミタンスなどの一連の計算問題がさっぱりなのだ!説明を読んでもわからない!ここで心理的な壁になり、さっぱり先へすすめないので、大いに焦る。そこで、この部分は、とりあえずほったらかしにしておいて、先の「半導体」へ進むことに決断。

「キルヒホッフ」さんはやっぱり理系音痴の自分には難解の一言。「たのしく覚える」に従ってひたすら問題そのものを暗記……。

また、大きめの単語カードを購入し、これに公式や覚えるべき問題を記して暗記に努める。ヒントはインターネットの「1アマへの挑戦」のHP。こうして振り返ってみると、結局、気が付くと、このHPと同じ事をしている。それほど、このHPは理にかなったアドヴァイスが満載されている。合格したらこのHPの制作者に一言お礼のメールを出しておこう。それに、もう一つ、別のOMさんの「1アマ合格講座」のHPも非常に役に立つ。さすがに1級は憧れの級なのか、優れたHPが数多くあるのが素晴らしい。

さて、CWだが、1分に80文字に設定してからは、見事に取れない取れない……。これも大いに焦りの元になっている。

試験日4月8日は上司にかけあって、休みにしてもらった。上司の表情が険しいのが不安。その分、前日の休みは日勤に。仕方ないよねぇ。仕事だから。それに、最近、人が足りずに厳しい状況だから……。とにかく渋い表情をしていた上司には感謝感謝……。

試験17日前(2001年3月22日 木曜日)~進行表の見直し

とりあえず、ようやくのことで、東京電機大学本は法規、工学とも一通り、目を通したことになる。法規はもう2度目を通したか……。そこで、以前軽く目を通したCQ出版の「楽しくおぼえる」に目をやるとほとんど、内容を覚えていないことに愕然とする。年とったなぁ……。こりゃだめかも……。あと2週間ちょいだなんて……。

そこで、再び計画の見直しで、進行表を改訂。 仕事のある日は法規、休みの日に工学で進めていくことにする。工学は計算があるので、電車の中ではできないから……。

 

試験会場独特の雰囲気にのまれないためにも、十分な準備を!

試験13日前(2001年3月26日 月曜日)~CWの音程に違和感

この数日で集中的に問題をやったおかげで「楽しくおぼえる」は2巡完了。こちらの方は、2級受験の時と同様、自分なりの公式の語呂合わせなども考え、本に記入して覚えることで、どうやら効果が上がってきた。東京電機大本も、あと少しで2巡完了。相変わらず計算問題は覚えていない。しかし、その語呂の成果か、公式だけを求める問題などは、どうにか記憶のとっかかりがあり答えられる場合もある。でも、そもそも、これでは、試験は大丈夫になったとしても、結局、すぐに忘れてしまうんだろうなぁ。それでいいのだろうかという根本的な疑問には突き当たってしまうのだが……。

ところで、どうにも、CQモールスカセットの音に違和感を感じ(今まで3級、2級と受験してきたときの実際の試験の音にくらべて随分ピッチが高いように感じるのだ)、電気通信振興会のテープを購入してきた。これが正解。2級を受験したときに記憶している音とほぼ同じような音質。多分、スピードもこれが本番に一番近いのではないかと思う。CWTWであわせてみると、1分65文字にセットするとほぼ同じ早さだということもわかった。また、周波数も700Hzくらいのようだ。ちょっとした出費だったが、ちょうどある仕事の謝礼に図書券をもらったこともあり(カミさんには内緒!)、手が出せてよかった……。

試験12日前(20011年3月27日 火曜日)~プラトー?

相変わらずモールスが問題。必ず、1分もすると、ぼろぼろと落とし始める。3、4回はそうして崩れてしまい、そのたびに、5、6文字落とす。すると、簡単にマイナス20点になり、そこに誤字が1文字でも加わるとアウト。

落ち込んでいたら、ある本で、モールス受信の進歩のプラトー(モールスを練習していると、誰でも、ある時から、急に進歩が止まったように思うのだそうだ。我慢して1ヶ月くらい続けていれば、また伸びていくのだそうだが、それを進歩の高原、プラトーと呼ぶそうだ。そういえば昔、保健体育の時間に習ったような……)は60文字から70文字くらいの段階で起きるという記述にぶつかる。もしかして、これって、今の自分の状態??もしそうだとすれば、少し気が楽になるではないか!そうだ、自分がダメなわけでなく、皆が通る道なのだ……などと、一生懸命自分を慰めなながら、練習を続けるのであった……。

学科は「楽しく覚える」と「東京電機大本」あわせて4巡したことになり、さすがに、どうにか、いけるのではとの予感がようやく得られる。それだけに、モールスが心配……。いやぁ、この数日の集中は並みではない。これだけの勉強を大学受験の時にしていれば、また人生変わったかもしれないのに……。とにかく、電車の中、会社でのトイレの中と勉強を続けている。夢もほとんど毎日試験がらみのものばかり見てる!

試験会場の江間忠ビルの1Fロビー
ここが夢に出てきたことが何度か
そこまでなると、合格も近い?? 

試験8日前(2001年3月31日 土曜日)~法規ショック!

試験日まで、あと1週間ちょっととなる。モールスは相変わらずとれない。調子がいいときもあるのだが……。集中力の問題があるのは間違いない。最初の1分はなんとか取れるのだから。

そこで、集中力を高めるために、CWTWの例文を4分程度に長くしてみた。これはツライ。果たしてききめがあるのやら。

模擬試験のつもりで、平成9年の問題をやってみるが、工学はきわどいところで、ぎりぎりの線。意外と新問題が多いことにも驚く。

だが、一番ショックだったのは法規。大丈夫なつもりが、なんと不合格レベルの点になる場合がある。問題の組み合わせで結構やばいようだ。法規は大丈夫と思っていただけにかなりショックを受ける。

試験3日前(2001年4月5日 木曜日)~試験会場の座り位置は?

いよいよあと4日で試験日。

いやがおうでも緊張感は高まる。公式の夢をよく見る。夢の中で一生懸命公式を唱えているのだ。だが、そのたびに、細かい点を間違えて、うまくいかなくて焦る夢だ。あぁ、参った参った。

課題は多い。

問題集も「東京電機大学本」も「たのしく覚える」もどちらもすでに4巡近くしていて、あわせると、すべての分野を8巡したことになるのに、未だに夢の通り、計算問題で2乗するのを忘れたり、分子と分母が逆だったり……。公式を使っての計算問題はうろ覚えでひどい目に遭っている。

おまけに、モールス。取りこぼしが多く、終わった後、数秒のあいだに、英語の文脈から判断して数文字うめて、やっと合格ラインといわれる80点台。これに緊張感が加わると大変。

そして、必ず終わった後に見直しが必要なことから、解答用紙の回収に一番時間がかかりそうな真ん中に座席は陣取ることになりそう。本当はスピーカーのすぐ近く、つまり真ん前に陣取りたいのだが……。

試験当日(2001年4月8日 日曜日)

本日試験を受けてきた。

今日一日を振り返ってみると……。 

本日は午前6時半起床。

前日は妙に眠れず、結局3時頃眠る。試験前にこんなになったのは久しぶり。というより小学生の遠足の前夜以来?????

妻が早起きしてコーヒーをいれてくれる。感謝しつつ、駅に向かう。さすがに日曜日早朝の電車は空いている。ゆっくりと座ってもう一度問題集に目を通す。昨日は、平成11年の試験問題をやってみたけれども、何とものによっては9割がたとれているものもあった。これが結構、本日の自信につながっている。

このときは利用しませんでしたが、
地下鉄大江戸線の「勝ちどき」駅からだと
徒歩10分程度で試験会場に着きます。

銀座に着き、バスに乗り換える前にマックで食事する。まだ時間は8時すぎ。余裕である。試験会場についたときには8時半。でも、やはり熱心な受験者が多いもので、もうすでに50人以上は教室に陣取っている。今回の受験者数は3部屋使っているところから、200人前後とみられる。(後でインターネットなどで流れた情報によると実際は150人程度だったらしいが……)

受験者はみな耳にヘッドフォンをあてて一生懸命電気通信術の勉強をしているか、「カエル本」、「東京電機大本」とにらめっこしているかどちらかである。先日の航空無線通信士のときのような華やかさやにぎわいとは無縁である。

9時15分になり、試験の説明が始まる。そしていよいよ問題用紙が配られ、9時30分、開始。

いよいよスタート!

問題をゆっくりと読む間もなく焦りを感じる。見たこともない問題が相当数ある。新問題?だとするとこの数は異常に多い。あせりながら問題を一通り見てみるが、やはり思った通り、自信のある問題はほぼ60%。これは合格ラインに届かないかも?一気に気分はブルーになりはじめる。

電離層のグラフやループアンテナ、それにうろ覚えでハッキリと思い出せない八木スタックの問題。

2時間ほどかけてどうにかマークシートは埋めたものの、かなりやばい。

教室を出て答え合わせをしようにも、どうにもとっかかりがつかめない!

あきらめ気分で、弁当を食べて通信術の準備をする。

前もって考えていた通り、教室の中程に陣取る。

13時には説明が始まり、やがて教室にA-Zの音が鳴り響く。購入した電気通信振興会のテープは700Hzくらいの音だったが、実際の音はそれよりもいくぶん低いようだ。650Hzくらいなのだろうか。それでも、非常に聞き取りやすい音で明瞭。

それにホッとしたのか、リラックスした気分で問題に突入し、こちらの方は予想外。誤字訂正が1カ所。文字を落としたのが1カ所。しかしこれも終了後に埋めて、結局マイナス1点ほどですんだようだ。これで少なくとも科目合格が保証されたようで、とりあえず受験した意味はあると自分を慰める。

続く法規の方はややひっかかりながらも、どうやら合格ラインには達した実感があった。

 

480東京会場は2室使っての試験(2002年撮影)

帰りのバスは空いていた。地下鉄大江戸線の開通のおかげで受験者も分散しているのだろう。勝ち鬨橋からの隅田川の流れを見ながら、あともう一回受験しなければならないのだろうか……と考えるが、あまりの天気の良さ、気温の高さに、ちょっと慰められていた。

夕方になり、インターネットにアクセスしてみるとJM4SMR局のページに早速、解答速報が出ている。あわせてみると……法規は合格レベルだが、問題の工学は150点満点中正解が103点。合格ラインといわれる105点に2点足りず、自己採点では不合格!

全身の力が抜けると同時に眠くなってしまった。そりゃそうだ。昨日は3時間しか寝てないから……。

カミさんだけは妙に励ましてくれる。「絶対大丈夫。これ、解答速報が間違いだよ。」「?????」無線の「む」の字も知らないくせに。それとも、僕の受験のために近所にある布田天神にお参りに行ったことがよほど自信になっているのか……。

次の試験日がある今度の8月は暑い闘いになるなぁと思いながら長い一日は終わったのだった。

ついでに、今回の受験の反省点をいくつか(まぁ、妻によるとまだ不合格と決まったわけではないということだが)...

基本的なところをしっかりとおさえていれば失わなくてすんだ問題が多い。

コンデンサの誘電率に関連した問題がよい例で、静電容量を求める式をせっかく覚えていたのだが、肝心のイプシロンの意味に気を留めていなかったため、それさえ知っていれば取れる驚くほど簡単な問題も取れなかった。やはり、物事を覚えるときには、問題の解答から丸暗記するのではなくて、その意味をやはり考えるべき。

問題の数値等細かい点が入れ替わって出題されるケースは多くなってきている?

やはりコンデンサの出題で過去問題とまったく同じと早とちりして点を失った。数値が変えられていたのに……。別問題の合成インピーダンスも、コイルがオームでなくヘンリーで表記されているだけで、もうあきらめてしまっていた。もったいない。いずれにしても、「楽しくおぼえる」に当局側も対策に乗り出したのか、完全な過去問の繰り返しが少なくなってきているように今回の試験では感じられた。

全体的に健闘したとは思う。特にモールスの進歩は著しかった。でも、やはり工学は理屈を理解すべき。そして公式もきちんと細部まで覚える必要がある。やはり「楽しくおぼえる」式では、こうして、見慣れない問題が多く出てくるとアウトだから……。

試験後12日目(2001年4月20日 金曜日)~妙な展開

妙な事態が起きている。例のインターネットの解答速報のページだが、工学の熱電流計の問題の解答が違うのではという意見が出ているらしい。事の発端は「無線従事者の館」のホームページの掲示板で、ある利用者からその指摘がなされたこと。結果、当初の解答例ではなく、私が解答したほうが正しいことになる。解答例を掲載した方もホームページで、この問題を詳しく取り上げている。結局当初の解答は違っているということで、どうもおさまりそうだ。(解答速報のアップロードという作業は大変だと思います。こうした真にボランティア的な活動をしているこのサイトの運営者に対して、私は心から敬意を表するものです!!)

もしも本当にそうなら、工学の自己採点結果は108点となり、合格ラインである105点をかろうじて上回る。

カミサンの例の「大丈夫」発言が実現してしまうことになる。ただ、あまり期待しないようにしよう。結局、自分の今回の出来は低水準であることには変わりないのだから。

試験後15日目(2001年4月23日 月曜日)~合格通知! 

会社の会議のために休日出勤。夕方、新宿のドイツビールの店(ちなみに「クライネ・ヒュッテ」という店でなかなか料理の美味しいお店です)でカミさんと食事をとり、帰宅し、マンションの入り口に新聞を取りに行ったら、試験結果通知の葉書が!早い、早すぎる。まだ、今週末くらいだと思っていたのに。試験からわずか2週間だよ!(いままでは3週間かかると言われていたので)はやる気持ちをおさえつつ、シールをはがしてみると……「合格」の2文字!まさかの合格!

すぐに部屋に戻り、カミサンに報告。「だから言ったでしょう!合格するって!」いやぁ、今度ばかりはカミさんに頭があがらない。腹の底から喜びがわき上がってくる感じ。これは嬉しい。何よりも、もう試験勉強しなくていいんだ!という気持ちが心地よい。この日はさらにビールをかさね、美酒(といってもスーパー・ドライ)に酔いつつ、ためつすがめつその葉書を眺めていた。

以上、日記からの抜粋でした。今、考えてみると、丸暗記を中心にした勉強でよくまぁ合格したと思います。運が良かったのも確かでしょう。とはいえ、4級受験以来、勉強を重ねてくると、いろんなことを自然に覚え、スローなペースではありますが、少しずつ内容も理解してきているようです。それに本来、覚えるべき事柄も、実際のアマチュア無線業務につながる事なわけですから(例えば、空中線の高さと電波の見通し距離の公式なんて、実践に役立ちそうですよね)、受験勉強をするということは、すなわち、無線技士としての力をつけることであり、決して無駄ではないと思いました。せめて、自分が、第1級アマチュア無線技士の名にふさわしくなれるように、これからも努力していきたいと思っています。

Posted by JA1AIM